AHKテキストへようこそ
中学校から高等学校の貴方へ、そして再度、知識の整理をしたい皆さまへ
桐生 悠一
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  AHKテキストは、貴方を人類の叡智の宝庫へとご案内するための手引きにしていただきたいと思って制作しました。もともとは私の孫たちを対象に制作しましたが、その目的は既に果たしました。 もっと多くの方たちのお役に立てればと思い、ネット上に公開します。どうぞフェアユース(非営利・教育目的等)の形でお用いください。
 人類は社会的動物です。社会的動物はハチやアリなど多数存在しますが、人類だけの特長は、人類社会がその時代の社会の出来事や発見や発明を文字を用いた記録により次の世代に引き継ぎ、次の世代はそれに更に新しい出来事や発見や発明を付け加えるという作業により、文字を介して人類社会の叡智は累積的に量質ともに高度化し充実するところにあります。
 貴方は「何のために勉強するのか」をどのように考えていますか。昔の武士たちは十代の中頃までに元服(源頼朝12歳、源義経15歳)して一人前の戦士として社会生活に入りました。今は社会生活に入るために必要になる人類文明を習得するための知の体系が大きくなり、二十台の前半(およそ学士22歳、博士27歳)から後半に掛けてまで習得するようになっています。人生のステージを学習期⇒活動期⇒引退期に分けて考えましょう。戦国時代の学習期は十数年間、現在はその2倍の二十数年間になっています。活動期は社会人として活躍する人生の本番です。多くの人は70代になれば引退期に入らなければならないのですから、実際に使える活動期は昔に較べれば随分短くなってきています。
 何故こんなに学習期が長くなったのでしょう。これほど時間と費用を掛けて行なわなければならない教育とは何なのでしょうか。教育とは、社会的動物である人類が、社会の存在基盤となっている人類の叡智に基づく文明を次の世代に引き継いで行くために、壮大な労力と費用をかけて遂行している事業なのです。中学、高校、大学での教育期間こそは、あなたが社会生活に入る時に一人前の社会人として活動して社会に貢献できるまでに貴方の能力を高めるために行う社会人としての人生の準備期間です。  日本国が大勢の国民に対してこのような長期間の教育制度を施行したのは明治維新以降のことで、そう長い歴史がある訳ではありません。幕藩体制の時代にも、寺子屋等の教育機関の存在で、日本人は世界でも有数の識字率が高い優秀な国民でしたが、多くの若者たちは読み書きと算盤を習得したら年齢的に一桁代から十代前半で実社会に出て、一人前の人間として人生の活動期に入りました。  近代社会は社会制度の面でも、科学技術の面でも、その前の時代とは違って格段に高度化しており、その習得にもそれなりの時間を掛ける必要があると人々が納得して、この教育制度は成立しています。しかし、ここ数十年で国民皆大学となった現状には疑問も問題もあります。 私は学習期が長くなった大きな原因は科学技術や医学が近年、急速に高度化したためだと思います。それは大学での卒業に必要な単位数が理系の学科の方が文系の学科より多いことにも現れています。現在は科学技術の急速な発展期であって、それが牽引役となって大學制度全体の所要単位数を増やしているのでしょう。  科学技術の最先端部分は極めて高度であり、一般の人間にとっては無理に理解する必要はありません。しかし、現代社会に生活する以上、社会を支えている科学技術の基礎的な知識の習得は欠かせません。このテキストは貴方が本格的に大学で学び、社会へ出て活動する時に役立つ「これだけは知っていて欲しい」という科学技術の基礎的知識のエッセンスを提供しようとするものです。  また、理系の人たちも人間社会に住む以上は、人間性を理解し、人間社会の常識を知ることが絶対的に必要です。歴史の理解修得こそ人間社会に生きて行く上で有益な指針を貴方に与えてくれます。

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