AHKテキストへようこそ
中学校から高等学校の貴方へ、そして再度、知識の整理をしたい皆さまへ
桐生 悠一
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  何をやるか「一寸先は闇」の人間社会については、「誰も判らない」というのが本音です。特に爆発的人口増加、IT技術・バイオ技術の急速な進歩と実用化という人類史上特筆さるべき転換点に踏み込んだ現在、人類社会とそれを載せる地球の運命は予測不能です。こういう極限的な状況の時代において最も参考になる指針こそが「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」にある歴史です。
 バブル崩壊で「日本の失われた20年間」を招いた政策責任者の失敗は、ローマ帝国のティベリウス帝の治世にあった前例を知っていれば、上手に対応できたと思われます。少子化はギリシャ諸都市国家、ローマ帝国、ベネチィア共和国末期、イスラーム帝国など多数の実例があります。社会的混乱期に何が起こるかはフランス革命やロシア革命等事例に事欠きません。欧米のエリート層は歴史を最重要科目として、その履修に重きを置きますが、日本の指導者層は入試で軽視される歴史を知らな過ぎるための「愚者は経験に学ぶ」的な失政が多過ぎます。このテキストを読んで、貴方が歴史に開眼されることを期待します。
  このテキストは私が読んだ図書の記事から、貴方が中高生時代に馴染んでおくと一生の役に立つと思った記事のエッセンスを私の人生観・世界観を通して編纂したものです。このテキストを読めば、貴方は人生経験を積んだ人間が読んだ膨大な図書の最も大事な部分を圧縮した形で吸収できます。
 このテキストはできるだけ出典を明記しています。原典をそのまま転記している場合には、書き出しを左から2字引いて書き、後に原典の書名・著者・発表時期を明記しました。
引用した図面・写真・グラフなども同様に可能な限り出典(一部不明あり)を明らかにしました。 当然ながら、テキストのどの個所も先人が書いた本を読んで何らかの形で参考にしていますが、特に原典と 記述内容が近い場合は、「・・・を参照」と断りました。
このテキストの言葉遣いは「です・ます調」ですが、内容は貴方に知って欲しいことをきっちり書く、手抜きなしの硬派です。中高生の方なら、このレベルの内容は理解できると確信しています。
多少、難しい内容があっても、ぶつかって行ってください。判らなければ、そこで時間を取らず、読み飛ばして行ってください。そして、時間を置いて読み返してください。一字一句をその場で理解しようとするよりも、全貌を包括的にやんわり理解する態度で読んでください。「読書百遍、意 自ずから通ず」です。 普通に読む速さは1頁当たり3.5~5分間ですから、最初に見てほしい「サルと別れた日」は2時間もあれば全部読めます。これを読み終えると、貴方は大抵の大人が生涯かけても到達していない高いレベルまで「我々は何処から来たか」について理解できた人になります。

 科学が発見した「天地創造」や「宇宙の姿」は神話や宗教が押しつけていた単純な物語と較べると、実に生き生きとして多彩で奥行きが深く、魅力的です。我々は昔の人たちが想像力の限りを尽くしても片鱗も知り得なかった世界や宇宙の真相に迫りつつあるのです。
特にこの100年間ほどは驚異的な速度で科学技術が進歩し、「我々は何処から来たのか」は137億年前のビッグバン直後から現在までをかなりの精度で描き出すことができるようになり、「我々は何物なのか」も近年のバイオ技術の長足の進歩で約40億年前の生命誕生から今日の生物界に至るまでを詳細に説明できるようになりました。
 私が小学生だった1940年代に学んだ宇宙の姿と、今日の貴方が学ぶ宇宙の姿を比べても、長足の進歩を遂げています。それほど進歩したのに、最近では我々が知っている物質は宇宙に存在する全ての物の4%くらいに過ぎず、現在は正体が確認できていないDark Matter、Dark Energyが存在せねばならぬとの観測結果が得られています。まだ、貴方たちの前には広大な未知の領域が残されています。バイオ技術に至っては、以前は「神の領域」と見なされていた分野にまで、その応用を進めつつあります。
 だが、人類の知識の前線が進むとそこには新しい課題が立ちはだかり、まるで虹でも追いかけるような情況です。「人類の知の島の面積が広がるにつれ、その海岸線は長くなる」と言われるように、未知という海岸線がなくなることはないのでしょう。このテキストが貴方の人生観の向上に役立つことを希望します。  
 
敬 具

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