日本のエネルギー自立への道

桐生 悠一
 

1.日本のエネルギー事情改善への提案

資源小国日本は中東のエネルギー資源への過度の依存を避けるためと、エネルギー支出を低減するため に、長期的国家方針として原子力発電の比率向上を目指してきた。福島第一原発の過酷事故はその将来 展望を打ち砕き、現在の日本のエネルギー施策は迷走状態にある。
この窮状を打開すべく、多くの提案がなされている。これはその一つである。この提案がエネルギー問 題の救世主となるかどうか、先入観なく照査していただけないであろうか。
このような非常時には、エネルギー問題解決への行動決定者は、提案者の社会的地位に囚われることな く、その提案内容の価値の評価に集中していただきたいと思う。
筆者は二つの異なった方向から提案している。一つは日本の EEZ 内を流れる黒潮の運動エネルギーの 利用。これは再生可能な自然エネルギーで、その方向性に異議を唱える人はいないと思う。
もう一つは原子力の利用。国民の多くから時代錯誤と非難されそうだが、温暖化ガス対策と、エネルギ ーコストの低減と、将来のエネルギー需要の増加を考えると避けて通れない道だと確信する。
何れの提案も基礎的な工学知識をお持ちの方々なら簡単に可行性の検討が可能である。政治的にも経済 的にも利用の価値ありとお認めいただければ、一日も早く実行に移していただきたい。それが日本が国 際競争力を失うことなく、世界に伍して行けるエネルギー自立の道だと信じる。


2.自然エネルギー・黒潮発電の勧め

黒潮は世界最大級の海流であり、エネルギー資源として考えた時、日本の EEZ 内にその多くが含まれ ている。黒潮の駆動力は偏西風と日照による海水温の上昇とコリオリ力であり、何れも太陽エネルギー の現在のフローから得られるエネルギー形態である。化石燃料と違って取り尽くす心配がない。
NEDO は「日本の海域での海流エネルギーの賦存量は約 205GW(20500 万 kW)」と試算しており、日 本の年間平均電力需要量 15000 万 kW を超える潜在力がある。但し、何でもそうであるが、それを利用 し尽くすことは困難である。NEDO はその内の 0.63%が利用可能と診断しているが、これは現在進行 中の幾つかの開発計画の実力から推論された過小評価ではないかと筆者は考える。
黒潮の典型的な強流帯は水平方向は巾 100km、垂直方向は海面から深さ 200m付近までの表層流である。 黒潮は海域によっては年単位で時々流路を変える蛇行現象が発生する。
筆者の提案になる「発電パネル方式」による「係留型双胴発電船」は、数値例を挙げると海面から下へ 200mまでの長さと 150mの巾を有する発電パネルは流速 2m/s の時、黒潮断面 1 m2当たり約 5kW、計 15 万 kW の電力が得られると試算されている。発電パネルを懸垂する双胴船の浮力は 2 万トン程度が必 要である。これは黒四発電所の総出力のおよそ半分であり、これを 2 隻建造しても黒四ダムを建造する よりコストは相当低いと推定される。電力は水素に姿を変えて需要地へと供給される。このような係留 型双胴発電船を 100 隻も黒潮の強流帯に分散配置すれば、 1500 万 kW、日本の年間平均電力需要量の約 10%相当の電力で作られた水素が得られる。この提案になる係留型発電船の長所は次のようである。
(1)黒潮の流路変化に容易に追従できる。
(事前設置海底基礎・中継ブイ係留索方式)
(2)事前設置海底基礎の係留索を長くしておけば、1000~2000mの水深の水域にも対応できる。
(同上)
(3)海底基礎建設以外にメンテナンスのため海中へ立入る必要がない
(発電パネル海上跳上方式)
(4)量産技術が適用可能な数十 kW 級発電ユニットを多数集積する方式であり、同一断面積当たりの資材 使用量が大型機少数台使用より格段に少なく、経済性が著しく高い。(L2 乗 3 乗則)
(5)小型機なのでマテハン装置で自動着脱でき、海上でのメンテナンス業務の簡素化・自動化ができる。
(6)発電パネル方式は風力型発電機の2倍強の単位断面積当たりの出力が得られ、小型大出力化できる。



3.離島地下原子力発電・水素製造の勧め

福島第一原発で水素爆発が起こって風下が広範囲に放射能汚染され、多数の福島県民が人生を変えられ る大きな被害を被ったのは、放射能の塵芥が巻き上がって降り注いだ地域に多数の住民が生活していた からである。技術者から見ると「ここまで厳正にやるのか」と思われるほど厳格な原子力規制委員会が 再稼働を許可した原発を、住民の申し立てにより地裁が「運転してはならない」と決定できるのは、万 一の事故で被害を受けることを心配する住民の世論があるからである。もはや日本では、数十 km 圏内 に住民がいる場所では新設の原子力発電所の建設はできない。
一方、 過疎化が進む日本では数十 km 圏内に業務関係者以外の一般住民がいない離島が幾つも存在する。 そのような離島の、更にその地下に原子力発電所を建設すれば、万一の過酷事故であっても被害は地下 空間に閉じ込められて、住民に被害が及ぶことがない。
廃炉に当たっても、核燃料の再処理のための搬出が終わったら、原子炉を解体することなく、その場で コンクリート詰めにして地下空間へのトンネルを閉鎖して最終処分とすることができる。余った地下空 間は地下 50m ルールを満足する仕様に従っていれば、今後の各地の廃炉に伴って発生する炉内構造物 を含む放射性廃棄物を受入・埋設することもできる。この地下空間は最初は原子力発電所のサイトとし て、次いで放射性廃棄物の最終処分場として二度のお勤めを果たすことができる。
さて、多くの場合、離島は本土から充分に離れているために、電力をケーブルで送電することが経済的 に成立しない。幸い、日本は水素化社会のトップランナーたるべく官民共同で走り出している。離島地 下原子力発電所の電力で水素を製造し、それを専用タンカーで需要地へ向けて輸送することで、水素化 社会インフラの一翼を担うことができる。

詳しくは離島地下原子力資料 1をご査見ください。



4.理解してくださる方へ

日本の EEZ 内にある最大の資源はストックである海底資源ではなく、フローである黒潮の運動エネル ギーであると筆者は確信する。同じ考えの現在進行中の開発プロジェクトがあるが、それらは出力を電 力として需要地へ送る基本計画であるため、本土から近い海域でないと経済的に成立しない。それらの 基本構成(一旦海底に電力を集める)から出力を水素として送るスキームへの方針転換は不可能に近い。 また、海底に根を生やした構成なので、黒潮が流路を変更しても追従できない。
筆者の提案は黒潮の流路は年単位では変動するもので、それを追いかけてその時の適地まで移動して係 留発電し、その出力は水素とする基本構成になっている。ここに用いられた技術は 20 世紀中に成熟技 術となったものの総合化であり、容易に理解・評価が可能である。是非とも内容を精査され、実行可能 性の高さをご理解いただければ、その実現に向けた行動を起こしていただきたい。
離島地下原子力発電・水素製造法はそれを構成する要素は度々話題になっており、これまで総合化して 一つのシステムとして取り上げられなかったのが不思議である。実現が容易であり、世界に冠たる日本 の原子力技術の働きの場として好適でなかろうか。現在、電力使用量は年々漸減しているが、これが日 本の本当の姿であるとは思えない。自然エネルギーの重視は良いことだが、日本が縮小均衡に向かって 進んでいるような気がする。日本のエネルギーが自らの主権が及ぶ地域で全量調達でき、そのコストも 世界水準より低くなり、潤沢に利用できるようになる時、日本は再び活性化し、有るべき姿は大きく変 貌する。ここに提案されたエネルギーパスは何れも温暖化ガスを発生しない。その点で米国のシェール オイル、シェールガスより筋が良い。離島地下原子力発電所はドイツでは適当な離島がないため、実行 困難である。徒に他国の後追いをするのではなく、日本に与えられた天の恵みである黒潮と離島にこそ 相応しいエネルギーの開発に取り掛かりたい。



最 後 に


1.特許願なのに早期公開する理由

提案の具体的内容が全て特許願になっている。
この提案は特許権の売り込みかと思われるかも知れない。
筆者は特許文書の持つ特別な働きに注目して、そのような道を選んだ。
特許文書は日本国が存在する限り存続する。他国の技術者や関係者が絶えずウォッチしているグローバ ル性がある。配布先が限られる一般文書ではこうは行かない。多くは配布先以外の人々の目に触れる機 会すらなく、歴史から姿を消す。学会誌ですら、この動きの激しい時代に何時までその学会が存続し得 るのか保証の限りでない。
後世の評価を待つなら、特許文書に勝るものはないと筆者は考える。特に特許権を取得した場合は、信 用度が格段に高くなり、多くの関係者の真剣な注意を惹くことができる。
ここに公開された提案中4件は出願されて 18 ヶ月後の特許願公開を待たずに開示されている。これは 出願者にとって禁手であるが、 一日も早く日本がエネルギー自立を果たして欲しく、敢えて禁を破った。
これを第1段ロケットとして、読者が更に自らのアイディアを加えた第2段、第3段のロケットを飛ば せていただくことにより、日本のエネルギー自立の大きな動きが沸き起こることを心から期待する。


2.黒潮発電に関して

嘗て船上から、 「あそこからが黒潮だ」と教えて貰ったことがある。そこには黒々した海域が滔々と流れ ている。その迫力には言葉を失った。 「黒潮発電は実に愚かなアイディア」 「偽予言者に騙されるな」 等の黒潮発電を貶めるブログも見られる。 だが、黒潮の圧倒的な姿を自分の眼前にして、それが言えるのか。 黒潮には流速 2m/s の海域はあちこちにある。このエネルギー密度は風速 19m/s に相当する。年中無休 で同じ方向から風特有の息(短時間で流速が大きく変動する現象)もない一定速度の風が吹いているサイ トがあると聞いたら、風力発電の関係者はどう反応するだろうか。それが黒潮の姿なのである。 現在、本来なら黒潮発電を担うべき人たちが及び腰なのは、海中での建設作業やメンテナンス作業の難 しさをよく知るからだと筆者は思う。それ故、ここでの提案は、海底基礎や係留索・中継ブイ等の建設・ 保全以外の作業は全て海上で行えるように構成した。本文の図面を見、特許願文書に当たっていただけ れば、容易にご理解いただけると思う。


3.原子力による水素製造について

離島・地下で原子力により水素を製造し、本土に送るというコンセプトは、日本国民の集合智として既 に形成されつつあったと思われる。誰かが公表するのは時間の問題であったろう。筆者はそれらの要素 に「原子炉設置のその場所で」 「中間処分+最終処分を行う」ことを加えただけかも知れない。 「重要な発明は世界各地で同時並行的に行われる」というよく知られた経験則があり、離島地下原発は 将にこれに該当する。本件で大切なのは、そのコンセプトを一日も早く実現し、日本の原子力産業を再 活性化させ、国民が将来の日本のエネルギー自立に向かって希望と自信を持って活動できる環境を作る ことだと信ずる。 薪から石炭へ、石炭から石油へのエネルギーのパラダイムチェンジはそれぞれ 50 年間を要している。 2015 年が水素化元年だとすると、2030 年頃までが導入期になろうか。それまでに少なくも数基の離島 地下原子力水素基地が稼働していれば、日本の前途は洋々たるものになる。


以 上
ご覧いただいたことを感謝します。

ご自分も日本のエネルギー自立を推進する行動を起こしてください。
2015/5/5  桐生悠一