日本のエネルギー自立への道

桐生 悠一
[離島地下原子力資料1]

特願2015-86270 原子力により水素を製造するプラント




1.概 要


(1)要 約 書

【課題】福島原発の過酷事故以後の日本国では、新規の原子力発電所の建設は事実上不可能である。温暖化ガス低減の目標達成と、エネルギー自立の国策を両立させるための原子力エネルギーを新規に活用するための方策を得たい。
【解決手段】隔離距離範囲内に住民がいない離島を地下式原子力発電所の立地となし、発電した電力で電気分解法により水素を生産し、当該離島で水素を液化或いはMCH化して水素輸送専用船で需要地に届けるようにしてなり、当該原子炉の廃炉の時期が来たらその場で厳重閉鎖して中間処分及び最終処 分とする原子力利用の水素製造プラント。


(2)発明の効果

本発明は離島地下式原子力発電による電力で水素を製造し、需要地まで船舶で輸送する水素化社会シ ステムを構築することにより、閉塞状態にある日本国の原子力利用に風穴を開け、日本国が世界に先 駆けて無公害エネルギー利用を実現するための立地選定方式、原子力を水素化するまでの安全性が高 い原子力発電・水素製造プラントの方式を提案する。また、廃炉に必要な工事内容を極力低減して、 原子炉の生涯費用を下げて経済性と安全性を両立させることができる。


(3)産業上の利用可能性

これまでは遠隔地にある無人島は国防上の負の遺産と考えられてきたが、その離島を地下式原子力発 電所の立地となし、発電した電力を電気分解法により水素となし、専用輸送船でエネルギーの需要地 まで送り届ける水素化社会システムを構築することにより、日本国のエネルギー自給率を上げて化石 燃料への依存を下げ、温暖化ガス排出量の削減とエネルギー立国の国策を推進することができる。ま た、地下立地の利点を生かし、廃炉に当たってはその場での厳重閉鎖を以て中間処分となし、不動態・ 固化処理によって最終処分となし、廃炉処分費用と所要時間と処理工数との大きな節減を図ることが できる。



2.図面による説明


(1)離島地下式原子力発電・水素製造プラントの概念を示す断面図

離島地下式原子力発電・水素製造プラントの概念を示す断面図







3.関係者へのメッセージ


(1)問題意識は数日前からあり、潜在意識レベルで考えて続けていたようで、顕在意識に上がってきたのが 3/11 の明け方であった。発明を構成する要素は「離島*地下*原子力発電*水素製造*船舶輸送* その場埋設廃炉」である。
(2)6項目の要素は何れも既に実用化できるレベルにあるものばかりを組み合わせている。特に原発に関 しては世界的に最大の運転実績があり、構成部品の故障モードや交換時期が熟知された PWR を基本 にした本質安全に近い安全性を有するモデルを採用したい。エネルギー効率を追求して HTGR 等を 採用するのは次の世代に託したい。
(3)その後、特許電子図書館とブログ等のネット検索を行った。 「地下に原子力発電所を建設する」とのアイディアは、衆議院の山本拓議員が 1991 年に「地下原発:共存のための選択」(文明堂書店)として刊行され、現在も同議員が主宰する「地下式原子力発電所政策推進議員連盟」に多数の国会議員が超党派で加わって啓蒙活動を行っておられる。要素は「地下*原子力発電」である。
「離島に原子力発電所を作り、電気分解で製造した水素を油送船で需要地に輸送する」とのアイディ アは、ブログにも数回現れている。要素は「離島*原子力発電*水素*船舶輸送」である。
要素の組み合わせ「離島*地下*原子力発電*水素製造*船舶輸送」でヒットする案件は発見できな かった。
(4) 「廃炉する原子炉を構内の廃炉ピットまで移動させて埋設する」(特許第 3101095 号:日立製作所) 「廃炉する原子炉を建物内の床下空間まで移動して埋設する」(特開 2001-116876:東芝)とのアイデ ィアは先行発明として存在する。 何れも地上建屋方式の原子力発電所を対象としており、「原子炉を(最終処分場まで)移動する」が入っている。本発明は「その場埋設廃炉(原子炉を移動しない) 」が要素であり、これらは異なった要素であって要素の一致はない。
(5)後知恵では電気系統の津波対策や4号機への水素流入防止等は容易に実行できた筈である。だが蒸気 ボイラーですら信頼できる技術になるまでは 100 年間を要したと言われる。後知恵で段々技術が成熟 して行くのが人類文明の宿命なのであろう。日本の原発は目下謹慎期間中である。この時期に人口密 な本土等で原発を建造できる訳がない。可能とすれば、住民に迷惑がかからない離島地下原発であろ う。


以上に本発明に至るまでの経緯を述べた。本発明が先に行われ、後に上記の調査を行ったが、これでお判りのように本発明を構成する要素の断片は既に IT 空間に存在していた。日本人の集合智として既に 本発明の機は熟していた、後は誰がそれを総合化して発表するかの先陣争いだけが残っていたと言うべ きであろう。現時点では本発明と同一要素の組み合わせで、出願から 18 ヶ月未満なので公開されてい ない出願が存在する可能性がある。それにも関わらず、筆者は本発明を公開する。
筆者の目的は特許権の取得ではなく、日本人の集合智として当然存在すべきこのアイディアが政策実行 者の目に触れることにより、日本の政府や企業により一日も早く離島地下原子力・水素製造プラントを 実現するためのアクションがスタートすることを期待するからである。

日本は地理的条件から太陽光発電の総合効率は中東の 1/6、風力発電では欧州の 1/2 に過ぎないとの記事を見ている。日本はこれらの自然エネルギーの環境条件に恵まれた国ではないのである。 黒潮発電は将に日本のための自然エネルギーであるが、これで日本の全エネルギーを賄えるとまで楽観 視することはできない。
将来的に日本のエネルギー需要が現在の2倍になるなら、それを供給できる実力があるのは原子力しか ない。何時までも福島原発事故のトラウマを引き摺らずに、安全に飼い慣らされた原子力を国家のエネ ルギー政策の中核に据える日が一日も早く実現することを切望する。
出願 2015/4/3
2015/4/20  桐生悠一