日本のエネルギー自立への道

桐生 悠一


4.理解してくださる方へ

日本の EEZ 内にある最大の資源はストックである海底資源ではなく、フローである黒潮の運動エネル ギーであると筆者は確信する。同じ考えの現在進行中の開発プロジェクトがあるが、それらは出力を電 力として需要地へ送る基本計画であるため、本土から近い海域でないと経済的に成立しない。それらの 基本構成(一旦海底に電力を集める)から出力を水素として送るスキームへの方針転換は不可能に近い。 また、海底に根を生やした構成なので、黒潮が流路を変更しても追従できない。
筆者の提案は黒潮の流路は年単位では変動するもので、それを追いかけてその時の適地まで移動して係 留発電し、その出力は水素とする基本構成になっている。ここに用いられた技術は 20 世紀中に成熟技 術となったものの総合化であり、容易に理解・評価が可能である。是非とも内容を精査され、実行可能 性の高さをご理解いただければ、その実現に向けた行動を起こしていただきたい。
離島地下原子力発電・水素製造法はそれを構成する要素は度々話題になっており、これまで総合化して 一つのシステムとして取り上げられなかったのが不思議である。実現が容易であり、世界に冠たる日本 の原子力技術の働きの場として好適でなかろうか。現在、電力使用量は年々漸減しているが、これが日 本の本当の姿であるとは思えない。自然エネルギーの重視は良いことだが、日本が縮小均衡に向かって 進んでいるような気がする。日本のエネルギーが自らの主権が及ぶ地域で全量調達でき、そのコストも 世界水準より低くなり、潤沢に利用できるようになる時、日本は再び活性化し、有るべき姿は大きく変 貌する。ここに提案されたエネルギーパスは何れも温暖化ガスを発生しない。その点で米国のシェール オイル、シェールガスより筋が良い。離島地下原子力発電所はドイツでは適当な離島がないため、実行 困難である。徒に他国の後追いをするのではなく、日本に与えられた天の恵みである黒潮と離島にこそ 相応しいエネルギーの開発に取り掛かりたい。



最 後 にへ続く