ダイオキシンの化学構造と毒性
ダイオキシンは、右図のポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDD)とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)の1〜4と5〜8の位置に塩素が結合した化合物群で、塩素の数や付く位置によってPCDDは75種類、PCDFは135種類もあります。2と3と7と8の位置に塩素が付いた2, 3, 7, 8-テトラクロロジベンゾジオキシン(TCDD)がダイオキシンの中で最も毒性が強いことが知られています。
ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDD)
ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)
ダイオキシンの毒性を評価するときには、2, 3, 7, 8-TCDDの毒性を1として、他のダイオキシンの毒性の強さを換算してTEQという単位で評価します。ダイオキシンの毒性については急性毒性の他、発がん性、胎児の催奇形性、甲状腺機能の低下、生殖器官の縮小、精子減少、免疫機能の低下などが報告されています。
ダイオキシンは脂肪に溶けやすいので、脂肪分の多い魚、肉、乳製品、卵などに含まれやすくなっています。食物からの取り込みは0.26〜3.26pgと推定されており、体内への取り込み量の大部分を占めています。プランクトンや魚に食物連鎖も通して取り込まれていくことで、生物にも蓄積されていくと考えられています。その他では、呼吸により空気から取り込む量 が0.18pg、土が手についたりして取り込まれる量が0.084pg、飲み水からが0.001pgと推定されています。健康リスク評価指針値の5pg/kg体重/日を超える可能性があることがわかり対策を講じる必要性が生じました。
ダイオキシン発生の90%はごみ焼却による
ダイオキシンは、ごみの焼却、金属精錬の燃焼工程や紙などの塩素漂白工程など様々なところで発生しますが、90%はごみ焼却工程で発生しています。大気中に放出され、大気中の粒子などに付着したダイオキシンが落下して土壌や水を汚染します。
日本の大都市地域の大気中のダイオキシン濃度は、0.3〜1.65pg/m3程度(平成8年度の環境庁調査)で、欧米の都市地域の0.1pg/m3程度に比べ比べればかなり高い状況です。
ごみ焼却工程においてダイオキシンは、主に燃焼ガスの冷却時の飛灰中で金属イオン(銅イオンなど)の触媒によって炭素、酸素、塩素が結合して生成します。従って飛灰中にダイオキシンが多く含まれています。平成9年12月から、大気汚染防止法や廃棄物処理法によって、焼却施設の煙突などから出るダイオキシンの対策が開始されました。ダイオキシンを含む飛灰はフィルターによってトラップされ、大気中へのダイオキシン類の放出は環境基準以下になっています。
一方、トラップされた飛灰は焼却灰に混ぜるので焼却灰にはダイオキシンが含まれています。焼却灰は最終処分場で埋立処分されますが、ダイオキシン対策と処分場延命対策から最近は焼却灰を溶融炉で1400℃に加熱しスラグを作り、これを加工して道路などに使っています。溶融炉で加熱処理したときにダイオキシンは熱分解されます。溶融炉は、耐熱性や電力消費量が多いことが課題です。