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焼却に代わるごみ処理法 ー亜臨界水法ー
亜臨界水反応によるごみ処理法
原理     実証プラント例     施設見学記     亜臨界水反応ごみ処理施設の考察    
イビデン(株)亜臨界水生ゴミ処理実証設備の見学
年月日:2008年10月4日(土)
場 所:イビデン大垣中央事業所(岐阜県大垣市)
参加者:小金井市ごみ処理施設建設場所選定等市民検討委員会、小金井市ごみゼロ推進会議、小金井市環境市民会議、NPO法人シニアSOHO小金井、トンボの会他の有志13名
1.イビデン亜臨界水生ゴミ処理実証設備
 イビデンの新規事業推進室が大垣中央事業所のユーティリティ棟2階に設置して、本年9月初旬より稼働させたReAQUAと呼ぶ亜臨界水ゴミ処理実証設備は、ベンチャー企業であるフジムラインベント社が製作した亜臨界水処理設備で日常生活から出る生ゴミなどを液体化し、その液体をイビデンが製作した水処理設備により河川に放流できるレベルまで浄化するシステムである。(ベンチャーと大企業の協働に注目!)
 亜臨界水処理施設は民間企業の食品業界では既にかなりの数の導入実績があり、何れも順調に稼働している。
これらは焼酎メーカーなら搾り滓といった品質が安定している物質を対象にしていた。
 
 設備費も運転費も維持費も焼却炉方式より遙かに安価で耐用年数も長く、自治体財政に焼却炉のような過大な負担とならないで導入されることを目標としている。
2.運転状況見学(午前中)
 大垣市の給食センターから提供された余剰食材をホッパーより反応槽に投入、上部大型ボールバルブを閉鎖、高圧ボイラーで亜臨界水を供給、内部を撹拌しながら反応・液化させた後、冷却で内部圧力を大気圧まで低下させ、下部ボールバルブを開放して暗褐色の液体を排出させた。
 廃液受け格子上には数グラム程度の固形物が残り、他は全て液状化した。これを曝気槽で処理し、最後は膜処理してSS2ppm程度の透明水(河川排水基準の1/3を目標にしている) にして排出している。
微生物処理はプリント基盤等化学処理廃液の微生物処理で長年の経験と豊かなノウハウを持つイビデンの共生系菌叢処理方式に依る。 発生する汚泥量は通常の活性汚泥法の数分の1だが、それでも過剰になる部分は亜臨界水処理に戻す。 全く余剰汚泥を外部に出さない水処理方式(非常に珍しい!)としても注目に値する。
 実証実験開始後1ヶ月の現在は生ゴミのみを処理しているが、今後、紙やビニール袋なども投入、どのような亜臨界条件でどのような結果が出るかのデータを積み上げて行く。併行して、大學にも各種物質に対する亜臨界水の分解能力についての研究を委託している。
3.質疑応答で見えてきたノウハウ(午後70分間)
亜臨界水ごみ処理見学  昼食後、イビデン社およびフジムラインベント社の担当者との質疑応答の時間が持たれた。参加者から亜臨界水ごみ処理施設の能力、本格的に稼働した場合の問題点などについて様々な質問が出され、丁寧な回答が得られた。主な点を下記にまとめた。

● 紙はリグニンが溶出してクシャクシャに縮れたセルロースの塊になり、 プラスチックは原形のまま排出される。(300℃まで昇温すればプラスチックは液化するが、設備費・運転費ともに大きく増加する)
● 実証実験は1年間を予定しており、来年度には一定の答を出す。始めたばかりの段階で言うのは早いが、実用機では解袋機でビニール袋を破いて中身を出し、オッシレーションコンベアで振るって袋と紙を浮かして風力で飛ばし、金属は磁気選別除去した残りを亜臨界水処理するのが実用的かなとの感触を得ている。
● 長い金属棒をボールバルブが噛む場合は、トルク検出で非常停止させるようになっている。
● 現在は1回運転する毎に蓋を開いて内部を洗浄している。食品工場の設置例によると、直径1.8m、長さ4.5mの処理能力10トン(3バッチ/日)の設備では、内部洗浄は数日おきに行い、安全検査は年1回行っている。
● 魚の骨は液化する。ニワトリの骨は固形のまま残る。
● 給食センターで聞いた話であるが、そこの堆肥製造プラントは能力の1割程度しか稼働していない。 当地は柿、梨などの果物農家が多く、計画ではそれらの農家が堆肥を引き取ってくれることになっていたが、給食センターの廃食材でさえ毎日の品質が安定化していない、化学肥料の方が有効成分が濃厚と評価され、無料にしても誰も引き取り手がいない。やむなく製造した堆肥は全量焼却処理している。
● 共生系菌叢処理について質問有ったが、窒素、硫黄、燐、銅など重金属等にそれぞれ有効に働くな特殊な微生物(一部学名も挙げた) を含んでいるとの回答であった。イビデンが化学処理廃液の微生物処理に特別のノウハウを持つことは業界に知られている。
4.感 想
  水分約80%の水そのものと言うべき生ゴミを火力で焼却する原始的な焼却炉方式と比較して、水は水で処理する亜臨界水処理方式の技術的スマートさは刮目すべきものである。生ゴミについては、このような緩和された亜臨界条件でも既に全く問題なく、短時間で処理されている。
  最大処理量250kgの実証プラントで、今回は30kgの生ごみを処理した。250kgでも30kgでも反応時間はほぼ同じ(約30分)である。現在、東京都ではごみ焼却施設の稼働率が軒並み低下している。ごみの量が少なくなると燃焼温度が下がり、ダイオキシンなどの有害ガスを発生する。また燃焼温度のフラツキが大きいと施設を劣化させる。そこで燃焼温度を高くする為大量の燃料を使う。かくしてごみ焼却施設は大量のごみを必要とし、ごみの減量化・資源化を進めるほど焼却炉のごみ不足を招くという矛盾を抱えている。亜臨界水方式では運転効率がごみの量に左右されず、ごみの減量化・資源化の流れに逆らうことはない。
   プラスチックと紙など、更に高温高圧にしないと液化しない物質を、①設備費・運転費を多く要しても生ゴミと混合したままで処理するか、②事前に分離して残ったものだけを亜臨界水処理するか、の意思決定が残された問題であるようだ。
 或る試算によると、小金井市の可燃ごみを対象に焼却炉方式と亜臨界水処理方式の費用を比較した場合、亜臨界水処理の建設費は前者の1/2以下、石油を燃料にする場合の運転燃費は亜臨界水処理では残存固形物を焼却処理した場合でも焼却炉方式の1/25にしか相当しない。 処理サイクルの最後で亜臨界水を冷却するが、これを蓄熱材等へヒートリサイクルして原水の予備加熱に再利用すれば、更にボイラー燃費を殆ど要しない理想のシステムになり得る可能性がある。
   排水は液体なので、今後、貴重な物質となりそうなリン(米国は禁輸を検討中) を回収することができそうだ。(活性汚泥に取り込まれたリンは、汚泥が固体なので回収が難しい) 原水は処理水をリサイクルさせることができる。濃縮される水以外の物質は、蒸気ボイラーの常識と同じく約5%を河川に排水すれば蓄積しない。
  次世代可燃ごみ処理方式として極めて有望なシステムであると評価され得る。
(報告者 K)